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〜今日の二人〜



No.012


「…悪かった」
「本当に悪かったと思ってるの?」
謝罪の言葉に返されたのは、辛辣な疑問系。
「ご飯も食べないで、睡眠時間もとらないで、挙句の果てには休むどころかやることはやってるし。んで、人との約束は忘れて仕事してるし。…本当に悪かったと思ってるんだったら、今度からちゃんと人並みに食べて寝るよね?」
麻衣の言う「人並み」とは、睡眠時間は一日6時間以上、三食食事を摂ることを指す。
…自分には、些かハードルが高い。そもそも、意図的に不眠不休でいるわけではない。研究に没頭していると時間の経過を忘れ、空腹も眠気も感じないだけなのだ。
それを言えば、おそらく麻衣は怒るのだろうが。

「できる限り、努力する」
長い沈黙の後に出した答えは、確実なものではなかった。だが、ここで確実に約束することは出来ない。
自分の性格は嫌というほどわかっている。おそらくこれから先、寝食を忘れて論文に没頭してしまう事はいくらでもあるだろう。
だからこれは、自分にできる精一杯の約束だった。